遮熱塗装
光を反射し、熱を放射する特殊な機能を持つ塗料を使います。
夏の冷房効率を上げることができるので、消費電力の低下につながります。
塗料の中の特殊顔料が赤外線を反射し、セラミック成分が熱を放射します。塗装することで、屋根の素材温度が15 ~ 20℃下がり、夏の冷房効率を上げることができるので、消費電力の低下につながる塗料です。
建築研究所を中心とした遮熱塗料研究会では下記のように定義しています。
「地球温暖化対策を施した塗料で、熱に関与する赤外線領域を反射する塗料」
通常の塗装工程と同じ3工程で、材料代の差額のみで遮熱機能が得られることから、費用対効果に優れた塗料と言うことが出来ます。
尚、どんなに機能的に優れた塗料を使用しても、その機能を発揮させるか否かは、的確な工事工程が行われることにかかっております。そこで、ここでは「スレート屋根の塗り替え」、「折半屋根の塗り替え」、「屋上防水の改修」について、施工事例を見ながら、遮熱機能を十分発揮させるための工事工程をご説明いたします。
施工事例A: スレート屋根の塗り替え
施工部位: スレート屋根(外壁塗装時と同時)
塗装仕様: サーモアイSi(日本ペイント)
2009年、ご近所の方からのご紹介により施工させて頂くこととなりました。
下からはあまり見えないので、遮熱の機能性を重視し、反射率の高いライトグレーで施工させて頂きました。
戸建住宅の場合、屋根の下が空気層になっていて、遮熱塗装の効果が室内まで感じられることは少ないのですが、ロフトや空気層のない勾配天井となっている場合には、体感できるケースが多いです。
1. 高圧洗浄
最も基本でかつ大切な下地処理です。
この工程が不十分ですと、密着不良を起こし、折角高級塗料を塗装しても早期に剥がれてしまうこともあります。
尚、棟のトタン(鉄板)部分は高圧洗浄だけでは不十分なので、下塗り材の錆止め塗料の密着力を強くするため、サンドペーパー(紙やすり)をあてます。
2. シーラー
スレート材に浸透させ、風化した素材を強固にし、上塗り塗料を密着させる働きをする塗料で、下塗り材とも呼ばれます。
こちらで使用しているシーラーは、素材を固めるための浸透性と同時に、上塗り材の機能を最大限発揮させるための造膜性もあり、かつ、上塗り材を透過してしまう太陽光をこの時点で反射する遮熱機能も有しています。
3. 縁切り部材挿入
スレート屋根塗装で重要なのが、スレート瓦の重なり部が塗料によって詰まらないよう、縁切り部材を挿入することです。
この部分が塗料で詰まってしまいますと、ちょうど経年によってゴミが詰まっている状態と同様、毛細管現象により雨水を吸い上げてしまい、吸い上げた水が屋根の外に排水されなくなります。最悪の場合、屋根を塗装したことによって、屋根の下地材を腐食させてしまい、雨漏りの原因になってしまいます。
4. 中塗り、上塗り
プライマーが素材を強固にし、素材と上塗り材を密着させる機能を有するのに対し、上塗り材は素材を守り、色彩を持つ塗料です。
遮熱塗料であっても、保護力は通常の塗料と同様、その塗料の主成分である樹脂により決定されます。
施工事例B: 折半屋根の塗り替え
施工部位: 園舎の折半屋根
塗装仕様: サーモアイ4F(日本ペイント)
2010年春、日本ペイント主催のイーコトプロジェクトにおいて、神奈川県の伊勢原山王幼稚園の折半屋根を塗装させて頂きました。安田塗装も塗魂ペインターズの一員として参加させて頂いた際の模様です。
1. ケレン
最も重要な下地処理で、劣化塗膜を除去したり、錆止め塗料の密着力を強めるため、既存塗膜の目荒らしをする作業です。
折半屋根の場合、素材が鉄板であるため、高圧洗浄のような下地処理だけでは不十分な場合があり、比較的劣化が少なく、錆などが発生していない場合でも、ワイヤーブラシなどの工具を使用しケレンすることが望ましいと言えます。
こちらでは、ボルト部分は電動のボルトブラッシャーで、鋼鈑部分はマジックロンによるケレンを行いました。
尚、ケレンと一言で言いましても、使用する工具によりどの程度ケレンを行うかが表されることがあり、下記のように呼ばれます。
- ワイヤーブラシケレン(手工具)
- サンダーケレン(電動工具)
またケレンの程度によって下記のように分類されます。
- 2種ケレン: 電動工具を使用し、錆びている部分はもちろんのこと既存塗膜を全面除去。
- 3種ケレン: 電動工具を使用し、錆びている塗膜は除去、錆びてない既存塗膜は残す。
- 4種ケレン: 全体的にサンドペーパーやワイヤーブラシなどの手工具をあてる程度。
- (1種ケレン)※
サンドブラストまたはショットブラストという機械を使用し、既存塗膜を全面除去し光沢のある表面にするというケレン方法もありますが、建築の現場塗装ではほとんど適応されません。
なぜ、このように細かく分類されるかと申しますと、どのような工具を使用しどの程度ケレンするかによって、施工品質が大きく異なり、それにともなう費用が変わってくる為です。
どんなに耐久性の高い高級塗料の使用しても、この下地処理が不十分だと早期に剥がれが生じてしまい、高級塗料を使う意味がなくなってしまうといっても過言ではありません。
2. 錆止め塗料塗布(下塗り)
折半屋根の場合の下塗りの工程が、錆止め塗料塗布となります。スレート瓦の塗り替えで使用されるシーラー同様、錆止め機能と共に、遮熱機能が備わり、上塗りを透過してしまう赤外線をこの時点でも反射させます。
3. 中塗り、上塗り
プライマーが素材を強固にし、素材と上塗り材を密着させる機能を有するのに対し、上塗り材は素材を守り、色彩を持つ塗料です。
遮熱塗料であっても、保護力は通常の塗料と同様、その塗料の主成分である樹脂により決定されます。
施工事例C: 屋上防水の改修
施工部位: 屋上
塗装仕様: プルーフロンエコ遮熱(日本特殊塗料)
東京の都心の真ん中ということもあり、ヒートアイランド現象による暑さの厳しい街です。
2010年春、夏に向けて、冷房の効率化による省エネを狙い施工させて頂きました。
1. 高圧洗浄
最も基本となる下地処理で、コンクリート表面の汚れを高圧洗浄で洗い流し、防水材の密着力を高めます。(外壁改修と同時に行う場合は、高圧洗浄で対応しますが、屋上防水工事を単独で行い、高圧洗浄による汚水の飛散の危険が大きい場合は、高圧洗浄の代わりにワイヤーブラシやデッキブラシなどでコンクリートの汚れを落とすこともあります。)
2. 目地撤去
この現場のように、アスファルト防水のコンクリート押えになっている場合、押えコンクリートの割れを防ぐ意味で、目地が施工されておりますが、この上から防水工事を行う場合はこの目地を撤去します。
理由は、この目地材と防水材との密着が悪く、ここから亀裂が生じる場合が多いからです。
3. シーリング材充填
目地を撤去するとき、既存のバックアップ材も取れてしまうので、新しくバックアップ材を入れ、シーリング材を充填し、建物の動きに追従できるよう、下地を整えます。
4. ガラスクロス1(脆弱部)
プライマー塗装後、コンクリート目地をはじめ、出隅や入墨など、亀裂の生じやすい部分にガラスクロスを貼り、防水主剤で密着させ、補強いたします。
5. ガラスクロス2(全面)
全体的にプライマーを塗装し、巾1mのガラスクロスを全面に敷き、防水主剤で密着させていきます。
この時点で、目地部などの亀裂の生じやすい部分はガラスクロスが2重となり強固な下地が出来上がります。
6. 遮熱防水主剤塗布
前回までの工程で下地が完了しておりますので、ここから防水機能と遮熱機能を有する防水主剤を流し、防水膜の厚みを確保します。
通常、屋上の場合、膜厚を3ミリ以上確保するため、2~3回に分け防水材を流し、コテやローラーを用いて、均一にならします。
遮熱塗料と同様、トップコートを透過してしまう赤外線をこの中塗り工程の防水材で反射させます。そのため、一般的な防水材がグレーやグリーンなど、トップコートの色に合わせた主剤であるのに対し、この場合は反射機能の高い白であることが特徴です。
7. 遮熱トップコート
防水主剤が、膜厚を確保し防水機能をもたせる材料であるのに対し、トップコートは、塗膜意の劣化の要因となる紫外線から防水材を守る機能のある塗料です。
一般的に屋上と言えば、外壁などの垂直面と異なり、平場であることから、このトップコートは1回塗りで適正な膜厚が確保されます。
以上、工程は一般的なウレタン塗膜防水と同様で、遮熱効果を発揮する防水工事が完了となります。
遮熱塗装 Q&A
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遮熱塗料を塗ると、どの程度温度が下がりますか?
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遮熱効果は色によって違いはあるのですか?
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遮熱塗料の耐久性はどの程度ですか?
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遮熱塗料と断熱塗料の違いはなんですか?
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遮熱塗料はどこのメーカーで出していますか。
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遮熱塗料は、屋根用塗料だけですか?
環境問題に向けて
地球温暖化による環境問題の高まりの中、世界では、京都議定書の採決により温室効果ガスの削減目標などが取り決めされ、カーボンオフセットやグリーン購入などの取り組みがなされ、日本ではグリーン購入法、チームマイナス6%の推進などが実施されています。
とくに先進国と呼ばれる国は高度経済成長を経て物質的に豊かになる過程において、自覚する、しないに関わらず、環境負荷を与えてきたことは言うまでもありません。
以前、塗魂ペインターズ と イーコトプロジェクト の活動に参加させて頂くにあたり、日本ペイント販売さんの社員の方々とお話しする機会があり、そのことがきっかけで少しづつ環境問題について学び始めています。
しかしながら、不自由のない日常生活を過ごさせて頂いている中、環境問題を実感として捉えられるほど感性が優れている訳でもなく、また、何かを始めようと思ったところで、「私ひとり動いたところで何ら変わらないではないか」、「何をしたらよいのだろう」と戸惑ってしまった時期があるのも正直なところです。
そんな時、ふと10年程前にネット上で広がった「世界がもし100人の村だったら」の文を読み返す機会がありました。
世界が100人の村として集約され紹介されていることで、様々な環境の下、様々な考えをもつ人々がいること、そして、自身が恵まれた環境にいることを身に沁みて感じさせられるのです。
折角なので全てご紹介させて頂きます。
中学校に通う長女の担任は、生徒たちに毎日メールで学級通信を送ってくださるすてきな先生です。
そのなかに、とても感動したメールがあったので、みなさんにも送ります。少し長くてごめんなさい。
今朝、目が覚めたとき
あなたは今日という日にわくわくしましたか?
今夜、眠る時
あなたは今日という日に満足できましたか?
今いるところが、こよなく大切だと思いますか?
すぐに 「はい」 と言えなかったあなたに贈ります
これを読んだらまわりが少し違って見えるかもしれません。
世界には 63 億人の人がいますが、もしそれを 100 人の村に縮めるとどうなるでしょう。100 人のうち
52 人が女性です
48 人が男性です
30 人が子供で
70 人が大人です
そのうち7 人がお年寄りです
90 人が異性愛者で
10 人が同性愛者です
70 人が有色人種で
30 人が白人です
61 人がアジア人です
13 人がアフリカ人
13 人が南北アメリカ人
12 人がヨーロッパ人
あとは南太平洋地域の人です
33 人がキリスト教
19 人がイスラム教
13 人がヒンドゥー教
6 人が仏教を信じています
5 人は、木や石など、全ての自然に霊魂があると信じています
24 人は、他のさまざまな宗教を信じているか
あるいはなにも信じていません
17 人は中国語を話し
9 人は英語を
8 人はヒンディー語とウルドゥー語を
6 人はスペイン語を
6 人はロシア語を
4 人はアラビア語を話します
これでようやく、村人の半分です
あと半分は
ベンガル語、ポルトガル語、インドネシア語、日本語、ドイツ語、フランス語などを話します
色々な人がいるこの村では
あなたと違う人を理解すること
相手をあるがままに受け入れること
そしてなにより
そういうことを知ることが大切です
また、こんな風にも考えてみてください
村に住む人々の 100 人のうち
20 人は栄養がじゅうぶんではなく
ひとりは死にそうなほどです
でも 15 人は太りすぎです
すべての富のうち
6 人が59%をもっていて
みんなアメリカ合衆国の人です
74 人が39%を
20 人が、たったの2%をわけあっています
すべてのエネルギーのうち 20 人が80%を使い
80 人が20%を分け合っています
75 人は食べ物のたくわえがあり雨露をしのぐところがあります
でも、あとの 25 人はそうではありません
17 人は、きれいで安全な水をのめません
銀行に貯金があり財布にお金があり
家のどこかに小銭が転がっている人は一番豊かな 8 人のうちの 1 人です
自分の車を持っている人は 7 人のうちの 1 人です
村人のうち
1 人が大学の教育をうけ
2 人がコンピューターをもっています
けれど
14 人は文字が読めません
もしあなたがいやがらせや逮捕や拷問や死を恐れずに
信仰や信条、良心に従ってなにかをし、ものが言えるなら
そうではない 48 人より恵まれています
もしあなたが空爆や襲撃や地雷による殺戮や
武装集団のレイプや拉致に怯えていなければ
そうではない 20 人より恵まれています
1 年の間に、村では 1 人の人が亡くなります
でも 1 年に 2 人の赤ちゃんが生まれるので来年は、村人は101人になります
もしもこの文章を読めたなら
この瞬間に、あなたの幸せは 2 倍にも 3 倍にもなります
なぜならあなたには、あなたの事を思ってくれている誰かがいるだけでなく
文字も読めるからです
けれど何より
あなたは生きているからです
昔の人は言いました
巡りゆくもの、また巡りかえると、と
だからあなたは、深々と歌ってください
のびやかに踊ってください
心を込めて生きてください
たとえあなたが、傷ついていても傷ついた事などないかのように
愛してください
まずあなたが愛してください
あなた自身と、人がこの村に生きてあるということを
もしもたくさんのわたし・たちが
この村を愛することを知ったなら
まだ間に合います
人々を引き裂いている非道な力から
この村をきっと救えます
きっと・・・
大切なことは、環境や社会問題について「実感できる」「実感できない」に関わらず、実感できないながらも、少しずつわかるように努力しつつ、すでに開始している方々の仲間に入り、まずは身近なところに「参加」するという形からでも、開始することなのでしょう。
環境破壊によって住まいを奪われることのない豊かな環境で暮らしていることを、客観的に捉えられるだけの精神的ゆとりを持ち、同じ100人の村で暮らしながら、環境破壊によって生活を脅かされれいる村人に思いを馳せられるだけの感性を取り戻したいと思います。
まずは、人生の半分以上の時間を費やす仕事を通じ、何が出来るかを模索し、塗料開発に携わるメーカー様や心ある多くの皆様と連携し、環境問題の取り組みに参加させて頂こうと思います。