外壁塗装(サイデイング編)
サイデイングの場合、目地や窓廻りなどの
既存シーリングの下地処理がもっとも重要な作業になります。
外壁がサイデイングの場合、もっとも重要となる下地処理が、サイデイング目地と窓(サッシ)廻り、換気口などの設備廻りの既存シーリング下地処理です。
既存シーリングの下地処理の方法としては、下記の2種類があります。
- 増し打ち(打ち増し)
既存のシーリングは撤去せず残し、その上から新規のシーリング材を充填する方法 - 打ち替え
既存のシーリングを撤去し新規にシーリングを充填する方法
増し打ちに関しましては、その上からシーリングを充填しても適正な厚みが取れる場合に限り、コストパフォーマンス(費用対効果)が高く有効な手法といえます。
(例えば、ALC目地のように目地部分が凹の形状となっている場合など)
しかし、多くのサイデイングの場合は、既存のシーリングの上から新規のシーリングを充填しても適正な厚みが確保できないため、増し打ちは応急処置的な効果しかえられない場合が多く、到底、適正な処理とは程遠く、ほとんどの場合、「打ち替え」が必要となります。
シーリング撤去の工程及び注意点は下記の通りです。
1シーリング撤去
文字通り、既存のシーリングを撤去する工程です。
鉄部のケレン(錆、劣化塗膜の除去)も同様ですが、撤去するといってもどの程度きれいに撤去するかによって、この工程に関わる労力が大幅に異なり、それに応じて価格にも反映されます。
耐久性の視点から考慮すれば、相応の労力を費やし、出来る限り残シーリングが残らないよう撤去することが理想といえます。
(残シーリング削ぎ)
但し、既存シーリングが充填された際、攪拌不足による不良硬化を起こしている場合などは、完全に撤去することが困難な場合もあります。
2バックアップ材又はボンドブレーカー(絶縁テープ)設置
目地の動き(ムーブメント)が比較的大きいと判断されるような場合、シーリングの充填は、充填される部分が凹の場合、底部分を除く両サイド面の接着が基本となります。
一見すると、底部分と両サイドの面の3面をきっちり密着させることが良いように思われがちですが、サイデイング自体の「反り」や目地部分の「動き」に対し柔軟に対応できず、目地が動いた場合、シーリング自体に亀裂が生じやすくなってしまうので、底部分を除く両サイドの2面のみを接着させる2面接着が基本となります。
このような、動きの想定される目地はワーキングジョイント※と呼ばれ、シーリングの性能を十分発揮させる為に、2面接着の施工が必要なことから、底部分にバックアップ材やボンドブレーカー(絶縁テープ)を貼ります。
尚、サイディングの目地の場合は目地が浅い為、シーリングの性能を発揮するための厚みを確保する必要性から、ボンドプレーカーが選定されます。
※ワーキングジョイントに対し、動きの想定されない目地をノンワーキングジョイントと言い、RC(鉄筋コンクリート)造の窓廻りや打ち継目地、湿式の石張りやタイル張りの目地では3面接着でも全く問題はありません。
3プライマー塗布
サイディング断面とシーリング材を密着させる下塗り材を塗る工程です。
この工程を疎かにしてしまうと、たとえ、シーリング材が新しく耐久性が残っていたとしてもサイデイングの動きに対応しきれず離れてしまう結果となります。
4シーリング材充填
新規のシーリング材を充填し仕上げる作業です。
シーリングには下記の種類があり、それぞれ特徴と適正な施工部分がありますが、サイデイングの場合は、目地の動きに追従する低モデュラス※で、応力緩和性※のあるウレタンシーリング材又は変成シリコンシーリング材が適しており、新しい塗膜と反応しないためノンブリード型が最適といえます。
尚、ノンブリード型でない場合には、新規にシーリング材を充填した後、ブリードオフプライマーを塗布することで塗膜との反応を回避させることが出来ます。
※低モデュラス
シーリング材には高モデュラスと低モデュラスのものがあり、簡単に言いますと硬化した際のゴムの硬さのことです。高モデュラスのシーリング材はガラス廻りや室内の水廻りに使用されるシリコーンシーリング材がほとんどで、ガラス回りを除くほとんどの外装では低モデュラスのシーリング材が適しています。
※応力緩和性
目地の動きに対して対応しようとする働きを言います。この応力緩和性が少ないシーリング材は目地が動いたときに柔軟に対応せず元に戻ろうという働きが生じるので、亀裂が生じやすくなります。
ご参考にシーリングの種類について
シーリング材にも塗料と同様多くの種類があります。
例えば、アクリル系/ウレタン系/シリコーン系、ジョイント部分の伸縮の追従性のある低モデュラス/追従性の必要のない部分に使用される高モデュラス、一液型/二液型、塗膜との相性の良いノンブリードタイプ、シックハウス対応の室内専用シーリング材など、多くの種類があります。
シーリングの場合は、塗料のような耐久性横軸と価格の縦軸の単純なグラフのような分類ではおさまらず、適材適所に使用することがもっと重要となります。
シーリングメーカーによって、多少、成分や見解の違いはありますが、シーリングの種類や特徴、施工部位の適材適所について、簡潔にご説明させて頂きます。
- アクリル系
ALCの新築時に使用される頻度が高く、コストパフォーマンスに優れているといえますが、改修時では耐久性の視点からあまりお勧めは出来ません。 - ポリウレタン系
外壁モルタル面のUVカット補修やサイディング改修やALCパネル、RC(鉄筋コンクリート)改修時に使用される頻度が高く、耐久性及び塗膜との密着に優れています。
但し、多くのウレタンシーリングが紫外線に弱い※ため、上から塗装しない場合はお勧めできません。※ウレタンシーリング材でもメーカーによって耐候性に優れたシーリングも開発されています。
例)オートンサイディングシーラント(オート化学) - 変成シリコーン系
サイデイング目地やタイル面、石面に使用される頻度が高く、耐久性に優れているため、シーリング仕上げの上から塗装しない場合にもお勧めできるシーリング材です。
サイディング改修時など上から塗装する場合は塗膜との密着が弱いことと、ブリード(塗膜の汚染)が起きてしまうので、シーリング材の上にプライマーを塗る必要があります。
最近では、ノンブリードタイプの変成シリコンが開発されましたので、サイデイングの改修時に耐候性及び塗膜の非汚染性の視点から、最も効果を発揮している製品と言えます。 - シリコーン系
ガラス廻りや浴室や洗面などの水廻りに適しています。
耐久性(耐熱性や耐寒性)は抜群ですが、塗膜との相性は最も悪いため、その植え方塗装する場合は使用を避けなければなりません。 - ポリサルファイド系
耐候性及び基材に対する非汚染性に優れていることから、タイルや石材の目地に適しています。
下記は、シーリングメーカーのホームページで閲覧できる資料です。詳しく知りたい方はご参考になさってください。